いま それぞれのミラオス(STORY)
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Imagine 想像する
初めて星空を見上げたのはいつだっただろう。
ぼくはその美しさに目を奪われた。
空に浮かぶあのキラキラは何だろう、空の先には何があるんだろう。
ぼくは一瞬で虜になって、お母さんに聞いてみた。
「空の向こうには果てしない宇宙が広がっているんだよ」
それからぼくは宇宙についての本を読んだり、映画を見たり……
いつからか「将来は宇宙飛行士になって、宇宙に行ってみたい」
そう思うようになった。
ぼくの部屋にはテレビの代わりに「ドア」がある。
ここでぼくはたくさんの宇宙に関する動画を見るのが毎晩の日課だ。
「星っていくつあるんだろう」
「空気ってどうなっているんだろう」
「地面は地球と同じなのかな」
「どうやって宇宙で生活しているんだろう」
ぼくの頭の中は気が付くと宇宙のことでいつもいっぱいだ。
そうすると、毎日宇宙にいる自分を夢に見るんだ。
宇宙をぷかぷかとただよって、家族や友達がいる美しい地球を眺めたり、
ちがう星を渡り歩いたり、宇宙人の友達もできちゃったり。
そんな楽しい夢をいつまでも見続けられたらなあ。
目が覚めると夢とはちがういつもの毎日。
でも「ぼくの夢」はここから始まる。
今日は何をしようかな。 図書館に本を借りに行って……
お父さんに科学館やプラネタリウムに行きたいとお願いしてみようか。
ぼくは毎日ウキウキしながらこのドアを開けて一日を始める。
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Connect 繋がる
仕事と家をただ往復するだけの、変化のない毎日。
そんな自分は何かを諦めたような顔で、生きていた気がする。
ある日、ミラオスを何気なくつけたとき
プロサッカーの試合が映った。
本来あまりサッカーには興味がなかった。
でもその時だけはなぜか、その一瞬一瞬のプレーに心を撃ち抜かれた。
泥臭く走り、体をぶつけ合いながら、最後の最後でゴールを守りきった選手の姿。
ピッチに倒れ込みながらも、仲間と笑い合うその瞬間に、
胸の奥が、じんわり熱くなった。
「…俺も、こんなふうに夢中になりたかった」
そんな気持ちが、不意にあふれた。
その数日後、偶然見つけた「社会人サッカーチーム メンバー募集」の張り紙。
迷いながらも、その場で電話をかけた。
初めはとても不安だったが、監督をはじめそこに通うメンバーが優しくサポート してくれた。
練習は大変だが今では、同じユニフォームを着て走る仲間がいる。
試合後に一緒に反省したり、冗談を言い合ったり、
誕生日を祝ってもらったのなんて、何年ぶりだっただろう。
気づけば、あの日までの自分が嘘みたいに、周りにはたくさんの友達ができていた。
あの試合が、あのドア越しの一瞬が…
僕の世界を、変えてくれた。
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Act 行動する
いつも作る料理がマンネリ化してきて
高校生の娘から「他の料理も食べたい」と言われた。
最近体重を気にしている娘のために野菜を必ず使っているが、レパートリーは少なかった。
本棚にある料理本を見ても、新しいレシピは思いつかず
「また今度他の料理を作るね~」と娘に伝え
家にある食材と調味料で作り慣れている料理を作ろうとすると...
ミラオスに美しい色彩豊かな街並みの映像が流れる。
そこは25年ほど前に大学の卒業旅行で行ったフランス・ニースだった。
地中海の海岸線を眺めながら海辺で食事したときのことを思い出した。
すると、地元の人がテラスで食事をゆっくり楽しんでいる姿が映る。
当時滞在中に食べた、ニースの名物「ソッカ」を食べていた。
「あっ、これ知ってる!何が入ってたかなぁ」と呟くと
ソッカのサラダ仕立ての作り方動画に切り替わり、必要な食材を教えてくれた。
ミラオスからインスピレーションをもらって
最寄り駅の近くにある、今までは入ったこともなかった、
世界中の珍しい輸入食品が揃うお店へ向かう。
ひよこ豆粉やローズマリーなど必要な食材を買ってきてソッカを作ってみた。
家族に食べてもらうと、「美味しい、美味しい!」と、とても喜んでくれた。
ミラオスにはまた、ニースの美しい街並みが映っていた。
夫が「今度家族旅行で行ってみるか!」と提案してくれた。
いつもと違う夕飯で、いつもと違う会話で、久しぶりにワクワクした。


