リビング空間を広く見せる7つの方法【プラン段階編】
家づくりを考えるうえで、家族がもっとも長い時間を過ごすリビングは、やはり特別な場所です。
「もう少し広くしておけばよかった…」
新居に住んでから、そんな声が聞かれることも少なくありません。実際、リビングの広さについて悩む方はとても多いのが現実です。とはいえ、敷地の広さには限りがあり、部屋ごとの面積も用途に応じて割り振らなければなりません。そのため「リビングを広くしたい」と思っても、なかなか思い通りにはいかないこともあります。そこで大切なのが、同じ広さでも「広く感じられるリビング」にする工夫です。今回は、リビングをより広く見せるためのアイデアを室内ドアのプロの目線でご紹介します。
リビングの不満で多いのは「広さ」
先ほども少し触れましたが、以前当社が行ったアンケートでも、多くの方がリビングに対して何らかの不満を抱えており、その中でも特に多かったのが「広さ」に関するものでした。

せっかくの新居なのに、家族が集まってくつろぐ大切な場所であるリビングに、どこか窮屈さを感じながら暮らすのは、やはり残念なことです。
とはいえ、希望するエリアで十分な広さの土地を手に入れ、ゆとりのある間取りの家を建てるのは、現実にはなかなか難しいもの。限られた予算の中でやりくりしなければならないうえに、最近は土地も住宅も価格が上昇傾向にあり、よりハードルが高くなっています。
では、新築やリフォームを考えるとき、リビングを少しでも広く見せるにはどうしたらよいのでしょうか?
20年以上にわたり室内ドアづくりに取り組んできた私たち神谷コーポレーションが、仕様の検討段階から入居後のインテリア選びまで、住まい手の視点で考えた《リビングを広く見せる7つのコツ》をお届けします。
今回はその前編として、「家のプランニング時に意識したい4つのポイント」をご紹介します。
1.プラン段階で広く見せる工夫
①フローリングの工夫
お部屋の中でも大きな面積を占めるフローリングは、毎日の暮らしの中で感じる空間の印象に大きく影響します。
例えば、下の画像のように、色によって部屋の雰囲気や明るさが大きく変わるのがわかりますね。
でも今回注目したいのは、色ではなく「幅」についてのお話です。
フローリングの幅によってお部屋を広く見せる効果があるという実例をご紹介します。
こちらの2枚の画像は、左が幅の狭いフローリング、右が幅広のフローリングです。
いかがでしょうか。劇的に変わるというほどではないですが、
幅の広いフローリングの方がゆったりとした印象でお部屋も広く感じますね。
2.廻り縁(まわりぶち)をなくす
2つ目のポイントは「廻り縁」をなくすことです。
こちらの画像のように天井と壁の隙間に貼ってあるのが廻り縁です。
廻り縁は、天井と壁の境目を仕切る「見切り材」としての役割がありますが、空間をすっきり見せたいときには、かえって圧迫感の原因になることもあります。
特にフルハイトドアを採用しているお住まいでは、あまり使われていないケースが多く見られます。
では、実際に廻り縁をなくすと、空間の見え方はどう変わるのでしょうか?
こちらの画像をご覧ください。
こちらは、一般的なドアを使用した空間です。いかがでしょうか?
廻り縁をなくすことで、天井と壁の境目が目立たなくなり、空間がひと続きに感じられるようになります。
その結果、実際の広さ以上に「広がり」を感じることができるのです。
では次に、フルハイトドアを採用した空間を見てみましょう。
いかがでしょうか。
ドアの高さが天井まであるので、廻り縁がなくなると更に空間がスッキリ広く感じられますね。
3.色の視覚効果で広く見せる
3つ目のポイントは、「色使いの工夫」です。
次はお部屋の“色”に注目して、空間を広く見せるための効果的な方法を2つご紹介します。
まずひとつ目は、白を基調とした配色で広さを演出する方法です。
ご存じの方も多いかもしれませんが、明るい色には空間を広く見せる視覚効果があります。
では、実際の事例をご覧ください。
白を基調とした空間は、明るさと広がりを感じさせてくれますね。
このように、ふんだんに白を取り入れることでお部屋に開放感が生まれ、実際よりも広く見せる効果があることがわかります。
では次に白以外の色を使った場合の印象を見てみましょう。
まずは、グレーをベースにしたクールなテイストの空間です。
落ち着いていてメリハリがあるお部屋ですね。
ただ、左の白い部屋の方がやはり広く感じます。
次はこちら、ブラウンを基調としたお部屋です。
茶系を中心に濃い色を多様して、モダンでありながらも高級感がありますが、やはり広さは白です。
いずれもお洒落な雰囲気で素敵ですが、空間を広く見せたいと考えるなら、白系を多用するのがおススメです。
なぜかと言うと、白が膨張色だからなんです。逆に濃い色は収縮色と言って、小さく見えます。
こちらの画像をご覧ください。この2つの丸は同じサイズですが白っぽい丸の方が大きく見えますよね。
このように、壁やドアを膨張色である白を基調にし、濃い色はアクセントとしてポイント的に使うことで、お部屋全体が広く見える効果があります。ぜひ、空間づくりの参考にしてみてください。
続いて、色使いのコツの2つ目は「青色」です。
こちらの2つの部屋を見比べてみてください。奥の壁の色が違うのですが…どちらの方が手前に迫って見えるでしょうか?
これはどうみてもオレンジの方が大きく見えるので、手前に見えますね。
でもよ~く見てください。これ、実は同じサイズなんです。
↓↓↓画像差し替え
この場合オレンジ色は、壁が大きく見えて圧迫感を感じますが、それに対してネイビー色は壁が小さく遠くに見えますね。
実はこれ、色の持つ特性で、進出色と後退色の違いなんです。
下の図は色相環(しきそうかん)というカラーチャートなんですが、赤から黄色を進出色といって、近づいて見えます。
それに対して、青から紫を後退色といい、遠ざかって見えます。
この特性を利用して、お部屋の奥の壁を青系にすることで、空間に奥行きが生まれてお部屋が広く見えるんです。
お部屋の一部分にアクセントカラーを検討されている方は、木目や茶系もいいですが、青で空間を広く演出するという選択もありだと思います。窓や間取りによってできない場合もあると思いますが、ぜひプラン段階でご検討ください。
4.フルハイトドアが空間を広く感じさせる
空間を広く見せる7つのコツ4つめは「ハイドア」を使用することです。
通常のドアに比べて高さのある「ハイドア」は、天井までの空間が途切れずにつながることで視線が縦に抜けます。
そのためドアを開くと壁がそのまま開いたような広がりと開放感を感じるのですが、これは建具でできる「錯視効果」のひとつで、空間をよりダイナミックに見せる鍵になります。
こちらは左が、通常の高さ2mのドア、右が2.4mで天井まで高さがあるフルハイトドアです。
これは廊下からリビングドアを開けたところなんですが、ずいぶん印象が違います。
左の写真は下がり壁があるので、ドアの向こうの部屋を見た時に天井が見通せず、リビングの開放感を感じることが出来ません。
また、下がり壁がリビングの光を遮ってしまうので、廊下の明るさも右の写真と比べて暗くなっています。
当社のフルハイトドアに代表される背が高いドア、いわゆる「ハイドア」は、2004年にKAMIYAが発表して以来、各社が商品を出しており右肩上がりで増えています。ただし、一般的な「ハイドア」と「フルハイトドア」で決定的な違いがあるんです。
それは「ドア枠」です。こちらをご覧ください。
狭い廊下から見ると2mのドアはドア枠が目立つので空間が圧迫されて、より狭く見えてしまうまです。
ほとんどの人が意識をすることのないこの「ドア枠」は、意外と空間の印象を大きく変えるので、より広く、すっきりしたイメージのお部屋を目指すなら枠なしのフルハイトドアがおススメです。
ここまで、リビングを広く見せる方法7選のうち、プランニングの段階でやっておくことを4つご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。家づくりって、性能や間取りはもちろん大切。でも、こうした「ちょっとした工夫」で、暮らしの心地よさはぐっと変わります。家族で毎日を過ごすリビングだからこそ、心地よく。広く見せる工夫は空間だけでなく、気持ちにもゆとりをくれるはずです。
次回は住んでからでもできる工夫を3つご紹介しますのでどうぞお楽しみに。