ミラノデザインウィークで出会った、ウェグナーの暮らし

生涯500以上の椅子のデザインを行った、ハンス・J・ウェグナーの魅力について

もうすでに終わってしまっている展示会ですが、2025年12月2日から2026年1月18日まで開催されていた
織田コレクション ハンス・ウェグナー展

インテリアが好きな方の中には、足を運ばれた方もいらっしゃるかもしれません。

私も、その展示会をとても楽しみにしていた一人でした。

会場では、長年にわたり北欧家具を収集・研究されてきた 織田憲嗣 氏による貴重なコレクションの数々が並び、心の中で歓声を上げながら会場を回りました^^

どの角度から見ても素敵な椅子の数々♪
左上:ピーコックチェアの分解パーツ、右上:ウェグナーが17歳の時に初めて製作した「ファーストチェア」(一番手前のグレーの椅子)
左上:チャイニーズチェアはその後「ザ・チェア」や「Yチェア」を生み出す元となった椅子、右上:カウホーンチェアのひじ掛け部分が見た目通りで雄牛の角の形
リデザインを繰り返した背もたれの数々

 

織田氏は、世界的にも有数の椅子研究家として知られ、実際に多くの名作椅子を所有しながら、「なぜこの椅子が名作なのか」を長年研究されてきた方です。
単に“コレクション”するのではなく、“実際に使い理解する”という視点を大切にされているところが、とても素敵な考えだと思っています。

そして展示を見ながら感じたのは、ウェグナー は、単に美しい椅子を作ったデザイナーではなく、「人が使うもの」として、どうすればもっと心地よくなるかを考え続けた職人だった、ということ。

パパベアチェア(赤)はあこがれですが、椅子の中で一番価格の高いラウンジチェア(1脚500万円前後)

ウェグナーは常に“リデザイン”を意識し、一度完成したものでも終わりではなく、「もっと良くできないか」「もっと自然に使えるのではないか」を考え続け、その積み重ねの中で数々の椅子を生み出していきました。

私自身は職人ではありませんが、同じモノづくりに関わる者として、その考え方はとても大切なことだと思っています。

ミラノで体感した、“もしもウェグナーが暮らしていたら”という空間

そんなウェグナーの世界観を、今年の ミラノサローネ ・ミラノデザインウィークで体感することができました。

それは、デンマーク家具ブランド Carl Hansen & Søn による特別展示です。

Yチェアが入口近くでお出迎え^^

今回の展示は少しユニークで、実際に人が暮らしているミラノのアパートの一室を借り上げ、期間中だけ住人の方に引っ越しをしていただき、その空間全体をインスタレーションとして作り込むというものでした。

期間中引っ越ししてもらうなんて、ちょっと驚きです(笑)

でも、それだけ“実際の暮らしの空気感”を大切にしたかったのだと思いました。

テーマは、

「もしもウェグナーがミラノに住んでいたら」。

ウェグナー本人の資料だけではなく、娘さんからのリサーチも行い、その人柄や価値観まで想像できる空間を作ったそうです。

会場に入ってまず感じたのは、“生活の気配”でした。

いわゆる「素敵にコーディネートされた空間」というより、本当に誰かが暮らしていそうな、人の気配。

光や風の入り方、家具の配置、書きかけのメモ、ウェグナーが好きだったものたち――
そのどれもがとても自然で、静かな心地よさがありました。

「家具を見せる」のではなく、「暮らしを感じられる」。

そんな展示だったように思います。

実際に使ってわかった、Yチェアの魅力

実は私自身もウェグナーのファンで、自宅でYチェアを使っています。

自宅のYチェア オーク材にブラック塗装で座面はナチュラルペーパーコード うっすら見えるオークの木目が気に入ってます♪

実は最初は、そこまで好みの椅子ではなかったのですが(笑)、作り手の想いや、その椅子ができるまでの背景などを知り、実際に座ってみて、徐々に「欲しい」と思う存在に変わっていきました。

そして今では、“長く愛される理由”を実感しながら生活しています。

特に思うのが、絶妙な位置にあるアームです。

ひじ掛けのある椅子って、立ち上がる時に少し邪魔に感じるものもあると思うのですが、Yチェアはそんなことがないんです。
自然に肘を置けるのに、本当にちょうどいい位置にある。

しかも、これは私用に作られたわけでも、日本人向けに設計されたわけでもありません。
もっと体格の大きな海外の方がデザインした椅子なのに、不思議なくらいしっくりくるんですよ。

また、普通に座るだけでなく、横向きに座っても背中をしっかり支えてくれて、とても座り心地が良い。
どの角度で座ってもしっくりくる感覚があります。

毎日使い続ける中で、「良いモノの本当の良さは、使うとわかる」ということを、改めて感じさせてくれる椅子です。

実際使ってわかった ”長く愛される理由”

最近は、SNSなどでインテリアや家具が次々と紹介され、どれも素敵に見えたりします。

そんな中で、ウェグナーの椅子が70年以上愛され続けている理由は、単に有名だからではなく、

自然に身体に馴染み、
暮らしに溶け込み、
長い時間を一緒に過ごせること。

そして何より、“心地よい”ことなのだと思います。

……なんだか、家族みたいですね(笑)

織田コレクション展では、“名作椅子”としてのウェグナーに触れ、ミラノでは、“暮らし”としてのウェグナーを感じることができました。

その両方を経験したことで、ウェグナーが本当に作りたかったのは、「椅子」そのものではなく、“心地よい暮らし”だったのかもしれない、と感じています。

インテリアは、ただ部屋を飾るものではなく、毎日の暮らしを少し豊かにしてくれるもの。

だからこそ、世界のデザインの最前線では、今どんな空間が生まれ、どんな価値観が注目されているのか。
実際に現地で感じたことは、住まいを見る視点が少し変えるきっかけにもなりました。

2026年7月18日(土)に開催する、プラチナメンバー様限定オンライン夜会では、今回のミラノサローネ・ミラノデザインウィークで実際に見て感じた最新の空間やインテリアの潮流を、今年も現地写真も交えながらご紹介いたします。

「海外のインテリアはハードルが高そう」
「自分の暮らしとは少し遠い世界かも」

そんな風に感じている方にも、暮らしのヒントとなるような内容ですので、ぜひ気軽にご参加いただけたら嬉しいです。

また別の視点で、“これからの暮らし”の新しい発見があるかもしれません。

フルハイトドア🄬
横浜ショールーム ゼネラルマネジャー
浅井 摂子

 

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